ナギがヒロに語る三つの「お砂糖体験談」

「ナギがヒロに語る三つの「お砂糖体験談」」のアイキャッチ画像

はじめに|ナギの話、ちょっと聞いてくれる?

ヒロさん、今日はちょっと…重たい話になっちゃうかもしれないんだけど、聞いてくれる?
VRChatを続けてると、いろんな人との出会いがあってさ、楽しいこともあるけど、その分だけ関係の難しさも感じるんだよね。
特にさ、「お砂糖」って呼ばれる、ちょっと特別な関係。

これまでにね、僕は3人のフレンドと「お砂糖」っぽい関係になったことがあるんだ。
みんなタイプは全然違っててさ、でもどの人とも、それぞれに嬉しい時間もあったし、最後には苦しかった。

今日はね、その3人との話を、順番にヒロさんに聞いてほしい。
どこかで誰かの参考になれば嬉しいし、なにより、僕自身の気持ちを整理したいってのもあるんだ。

第一話|ふつうに喋る彼女「ミユちゃん」とのこと

ミユちゃんと出会ったのは、ちょうど一年前くらいかな。
週末の夜、たまたま入ったワールドで、近くにいた子に声をかけたんだよね。

「こんばんは、ここ、初めて来たの?」って。
そしたら、「うん、なんかきれいなワールドだなーって思って」って、明るく返してくれてさ。

声の感じも自然で、少しおっとりしてて。
ふつうに喋る人って、ボイスに表情があって、すごくリアルに感じるんだよね。

その夜、2時間くらい話して、フレンドになった。

■ 日々のやり取りのはじまり

それからというもの、週末になるとだいたい同じ時間にログインしてて。
「お、ナギくんいる~!」ってワールドに飛んできてくれるようになったんだ。

VRChatのなかで、「誰かが自分を待ってくれてる」って感覚、これって、ほんとに幸せなんだよね。
話す内容はほんと他愛ないことで、仕事の愚痴だったり、見つけたかわいいアバターの話だったり。

で、いつからかお互いに「おやすみ」って言うようになって、夜ふかししすぎた日は「布団入ってからも通話つなごっか」なんて、Discordに切り替えたりして。

ああ、これって…「お砂糖」なのかもって思い始めたのは、たぶん僕のほうからだったんだ。

■ 変わりゆく距離

でも、楽しい時間って、ずっとは続かないんだよね。

彼女のログインが、少しずつ遅くなってきて。
「今日、疲れてて少しだけ~」とか「ごめん、明日早いから落ちるね」って言われることが増えてきて。

最初は気にしないようにしてたけど、やっぱり寂しくなってさ。
「無理しないでね」って言いながら、心のどこかで「なんで前みたいに遊んでくれないんだろ」って思っちゃう。

つい、ある日…
「最近ちょっと距離ある気がして寂しいよ」って言ったら、ミユちゃん、少し黙ってからこう返してきた。

「ナギくんといると、すごく楽しかったよ。でも最近ちょっと、自分のペースが分からなくなってて…ごめんね」

■ お塩の決断

そのあと、何度か会ったけど、前みたいには戻らなかった。

彼女の方から「少し距離を置きたい」って言われて、それが事実上の「お塩」だったんだと思う。
「ありがとうね。ナギくんと過ごした時間、大事だったよ」って。そう言われて、僕は笑って「うん」と返した。

でも、ほんとは悔しかった。
あれは僕のせいだったのかな、とか、もっと気を遣えてたら、とか…。

▼ヒロさんへの質問①

ヒロさんも、声ありのフレンドと「お砂糖」になったことってある?
その人がログインしなくなったとき、どうやって自分の気持ちと向き合った?

第二話|声の向こうにいた、彼(かの)じょ

ヒロさん、前にも少し話したかもだけど、次に「お砂糖」になったのは、ボイチェン使ってた子だったんだ。

名前は「ルカちゃん」。出会ったのは、某ボイチェンアバターの集まりイベントだったかな。
彼女は、まさに「理想の声」って感じの透き通ったかわいい声で、みんなからめちゃくちゃ人気があった。

でも、実は初めて話しかけた時、ちょっとだけぎこちなさを感じたんだよね。

■ 出会いと最初の印象

イベント会場で、たまたま隣のイスに座ってて、「あ、こんばんわー」って僕が声かけたら、彼女は少し間をおいて「うん、こんばんは〜」って返してくれて。

なんていうか…ボイチェンってわかってても、その声の奥に「人」がいるってことがちゃんと伝わってくる感じだった。

「ボイチェンなんだけど、変じゃない?」って彼女が自分から言ってきて、
「全然。むしろ、話しやすくて好きな声だよ」って返したら、すごく安心したようなリアクションしてたのが印象的だったなぁ。

■ 徐々に深まる関係

それから数日後、ルカちゃんからフレンド申請が来て、そこから毎日のようにワールドで会ってた。

ただ、最初は常にボイチェン越しの声だけだったから、どこか「仮想」感があって、リアルな距離を掴むのが難しかったんだ。
それでも、好きな音楽とか映画の話、ボイチェン設定で苦労してる話とか、どんどん深い話をするようになって。

「ナギくんってさ、ちゃんと声の奥まで見てくれてる感じがして、うれしい」って言われたとき、ちょっとドキッとした。

それって、たぶん僕にとっての“お砂糖”スイッチが入った瞬間だったのかも。

■ ボイチェンの壁

でもね、ちょっとずつ、引っかかりを感じるようにもなってきた。

例えば、一緒に寝落ち通話しようって言っても、「今日はリアル声バレしたくないからやめとくね」って断られたり、
オフの写真とか、リアルのことはほとんど話してくれなかったり。

もちろん、VRChatってバーチャルの世界だし、リアルを出さない選択肢もぜんぜんありだと思う。
でも、僕の気持ちがどんどん“本気”になってしまってて、相手の距離感とのズレに気づいちゃったんだ。

■ 小さな違和感から「お塩」へ

ある日、彼女が「最近ちょっと、ナギくんのこと意識しすぎちゃって、楽しく話せなくなってきたかも…」って言ってきた。

僕は「無理にお砂糖にならなくてもいいよ」って言ったつもりだったんだけど、
そのあとから、明らかにログインが減ってきて、DMも既読スルーになることが増えた。

「会いたいな」ってメッセージを送っても、返ってこない日が続いたある夜、彼女のVRCアカウントがフレンドリストから消えていた。

つまり、ブロックか解除されたってこと。

理由は聞けなかったけど、あのとき彼女の声じゃなくて「沈黙」が返ってきたことで、僕も察したんだ。

▼ヒロさんへの質問②

ヒロさんはさ、ボイチェン勢と深い関係になったとき、相手の「声じゃない部分」をどこまで信じられる?
それと、自分の気持ちが“リアル寄り”になってしまったとき、どうやってバランス取ってる?

第三話|沈黙のなかにあったやさしさ

ヒロさん、「無言勢」って聞いてどんなイメージある?
正直に言うと、僕はちょっと苦手だったんだ。
なんか、壁を感じるというか、コミュニケーションがとりづらそうで。

でも、彼──というか彼女なのかな?名前は「ハルさん」って言ってた。

ある日、人気の少ないワールドに入ったら、そこにひとりだけ、座っていたんだ。
音声も出してないし、動きもあまりない。
でも、その姿がなぜか、気になって。

■ 出会いは「エモート」から

近くに行って、手を振ってみたら、彼女もゆっくり手を振ってくれて。
それだけのやりとりで、なぜかすごく安心した。

その日は、それ以上の会話もなくて、ただ近くに座って空を眺めてただけ。
でも、それが不思議と居心地よくてね。

後日、再びそのワールドで出会ったとき、彼女がポータルを開いて僕のほうを見た。
「ついてきて」ってことだって、すぐに分かった。

■ やりとりは表情と動きだけフレンドになってから、たまに一緒にワールド巡りをするようになったけど、
彼女は一貫して無言だった。

でもそのかわり、全身を使った表現がすごく豊かでね。
頭を傾けたり、手をパタパタさせたり、「♡」のエモートを使ってきたり。

気がつけば、言葉がなくても通じ合えるような感覚が芽生えていて。
「今日もいてくれてありがとう」って、こっちから伝えたら、小さくジャンプして喜んでくれたりしてね。

■ 心が近づくにつれ

ある日、彼女が新しいアバターに着替えてきたんだ。
その姿はすごくかわいくて、細部までこだわりが感じられるもので。

僕が「すごく似合ってるよ!」って言ったら、彼女はくるくる回って、それを喜ぶように見せてくれた。
そのとき、「あ、この人にもっと何かを伝えたい、もっと知りたい」って、強く思ったんだ。

無言勢って、言葉がないぶん、想像をすごく使う。
だからこそ、想いがすれ違うこともあるし、慎重になるし、深くなる。

■ 変化の予感

ただ、ある日から、彼女がワールドに現れなくなった。

最初はたまたま時間が合わないだけかと思ってたんだけど、
1週間、2週間と経っても、姿を見かけることがなくて。

Discordも交換してなかったから、連絡手段がなかった。
「無言」というスタイルだったからこそ、どこにも“言葉の手がかり”が残ってなかった。

ログイン履歴も消えて、プロフィールも非公開に変わってて──
それはつまり、彼女が静かに、VRCから姿を消したってことだったんだと思う。

■ それでも伝えたくて

最後にいたワールドに、一人で何度か行ったよ。
あのときの景色を見ながら、心の中で話しかけた。

「ありがとう。あなたがいてくれた日々、すごく好きだった」って。

言葉を交わすことなく、始まって、終わった関係。
でも、僕の中では間違いなく“お砂糖”だった。

あれ以来、無言勢への印象は大きく変わったよ。
そして、“沈黙”の中にこそ宿る優しさや、強い想いがあることを知った。

▼ヒロさんへの質問③

ヒロさんは、無言勢のフレンドっている?
もし、全然言葉を交わさない相手と距離が縮まったら、どんな風に想いを伝える?

おわりに|三つの「お砂糖」を経て、僕がいま思うこと

ふり返ってみると、僕が体験した「お砂糖」は、どれも全然ちがった。

・声ありで自然に話せる「ミユちゃん」
・ボイチェンで自分を守りながら寄り添ってくれた「ルカちゃん」
・無言のままでもぬくもりをくれた「ハルさん」

それぞれの関係が教えてくれたのは、
「お砂糖」って、“ラブラブ”とか“恋愛”って言葉だけじゃ片付けられないものなんだってこと。

そこには、「信頼」や「甘えたい気持ち」、そして「居場所を大切にしたい」っていう、もっと深い感情があった。

■ 自分にとって「お砂糖」とは

最初はね、僕もどこかで、「これが疑似恋愛なんだ」って割り切ってたところがあった。
でも、実際に関係を築いて、崩れて、泣いて、喪失感を味わって──

ようやく気づいた。

VRChatの中でも、ちゃんと心は動くし、ちゃんと傷つく。
だからこそ、お砂糖は“軽く”ないんだよね。

もちろん、リアルの恋愛と同じではないけど、
そこにいるのは誰かの「心」で、その心に触れるということは、自分も何かを差し出すことなんだと思う。

■ お塩は、悪じゃない

正直言うと、「お塩」って、最初は“悪いこと”だと思ってた。
でもね、関係を終えるって、時には“守るため”だったり、“前に進むため”だったりする。

僕自身も、あのときのミユちゃんやルカちゃん、ハルさんが選んだ「さようなら」に、いまは感謝してる。

あの選択がなかったら、僕はいまだに未練の中で、誰かに依存したままだったかもしれないから。

■ そして、いま

最近は、「お砂糖」って言葉にこだわらなくなってきた。
それよりも、「一緒にいて楽しい」とか、「今日もログインしてよかった」って、そういう“瞬間”を大切にしてる。

それが続いて、結果的に「お砂糖」になってもいいし、ならなくてもいい。
でも、その人との時間を、ちゃんと感じながら過ごすこと。
それが、いまの僕にとって一番大切なことになった。

▼ヒロさんへの最後の質問

ヒロさんにとって、“お砂糖”って、どんな存在?
もし今、「この人とお砂糖になってみたいかも」って相手がいたら──
どんなふうに、その気持ちを伝える?

あとがき|ナギの、ひとりごと

こうして書いてみたら、なんだか心が軽くなった気がするよ。
VRChatの中で出会った大切な3人。それぞれの記憶が、ちゃんと僕の中に残ってる。

「お砂糖」っていう言葉に振り回された時期もあったけど、
今は、それを通して“人とつながる”ということの意味を、少しずつわかってきた気がするんだ。

ありがとう、ヒロさん。
こうやって話を聞いてくれて、ほんとにうれしかったよ。

次はヒロさんの番、だよね。
ヒロさんのお砂糖の話、もしよかったら…今度、こっそり教えて?

すみません、ありません。